※別なお話のキャラ同士が登場する物語です。
※そういう話が苦手な方は手遅れにならないうちに今すぐお戻りください。


※参加者
「COLORS」より
・ハル ・カエデ ・ヘリオ ・ハクト
「翔太と死神の日常」より
・翔太 ・死神 ・雄二 ・アイ ・真紀 ・コバ

以上、10名





私立夏色学園パレット組物語☆


   第一話 パレット組始業式!気になるあの子とフラグ乱立?!





「ちくしょー寝坊した!遅刻だ遅刻だー!」

今、道路を猛スピードで走っているのは風呂夢春彦(ふろむはるひこ)。大抵の人間からはハルと呼ばれている、桜色の髪以外はいたって普通の男子高生である。今日は私立夏色学園の始業式であるにもかかわらず、大遅刻をしてしまった所であった。慌てるあまり腕をめちゃくちゃに振り回しながら、ほとんど前も見ずに町の中を駆け抜けていく。

「よ、よし、このまま行けばギリギリ間に合うか……?!後はそこの角を曲がって真っ直ぐ……!」

脳内でもうすぐ見えてくるであろう校門に滑り込む自分を思い浮かべながら角を曲がるハル。前をよく見ていなかった彼は、別な方向からハルの向かう方向へ、ちょうど同じタイミングで駆けてきた人影に気づく事が出来なかった。
その結果、

「ぎゃあ!」
「きゃっ!」

真正面から悲鳴を上げてぶつかる事となった。額を打ち尻もちをついたハルが慌てて顔を上げれば、そこには自分と同じ学校の制服を着た一人の女子生徒が、涙目で蹲っている所だった。

「わ、悪い、あまりにも急いでてよく前を見てなかったんだ、大丈夫か?」
「ううん、私こそ遅刻しそうになってて、よく前も見ずに飛んでいたから……」

ハルの差し出した手を掴み立ちあがった女子生徒は、抱えていた箒にすぐさま跨り、ハルへ笑顔を向けた。

「ありがと!それじゃ、あなたも遅刻しないようにね!」

そのままぴゅーんと飛んで行ってしまった女子生徒を、ハルはぽかんと見送った。自分がどうしてさっきまであんなに急いでいたのか思い出したのは、それから数秒経った後の事。

「あいつ……空飛べるなら俺も乗せて行けよっ!」

慌てて駆け出したハルの耳に直後聞こえたのは、良く鳴り響く学校のチャイムの音であった。




結局遅刻して拳骨を落とされた頭を押さえるハルが新しい自分の席に着いたと同時に、先生がやってきた。今年の担任はどうやら、白い頭と金色の目が特徴の、見た目五歳児ハクト先生らしい。自ら踏み台を持ってきて教壇の後ろに置き、それに乗って生徒を見渡した。

「ふむ、これが今年わしが受け持つ生徒たちか、何とまあ個性的な者達が揃ったものじゃな」

見た目は子ども頭脳は大人なお前にだけは言われたくないよという生徒全員の心の声が教室に響き渡る。そんな声なんて無視して、ハクト先生は手に持っていた本を教壇に広げた。

「それではこれから一年、この夏色学園パレット組の担任となるハクトじゃ、よろしくな。皆初めて顔を合わせるじゃろうから、お主たちにも一人一人簡単に自己紹介をしてもらうとしよう。ではまずハム、お前からじゃ」
「まだ自己紹介もしてねえのにハム言うなよ!」

指差されたハルは仕方なく立ち上がり、まだほとんど顔も名前も覚えていない面々を見た。

「あー、俺は風呂夢晴彦、ハルって呼んでくれ。後この髪は生まれつきなんで馬鹿にしたものには目に直で絵の具突っ込むからそのつもりで、よろしく」

ハルがそのまま席に座ろうとすると、対照的に立ち上がる人物がいた。ガタン音を立てて勢いよく立ちあがったのは、何と朝ハルが曲がり角でぶつかったあの女子生徒であった。

「あーっあなたは!朝曲がり角で私にぶつかった人!」
「ああ何だ、お前一緒のクラスだったのかよ」
「ええーっヒメってば学園ラブコメものでお約束過ぎて最早パロディ的な話でしか見かけないほどのあの「曲がり角で女の子とゴッツンコ☆」をやっちゃったの?!ずるい!そんな主人公特権を惜しげもなく使うなんてずる……ごふっ!」

いきなり外野で騒ぎ始めた金髪男の目に青い絵の具をぶちまけてやってから、ハルは呆れた顔で首を横に振る。

「朝たまたまぶつかっただけだろ、何がラブコメだよ」
「いいえ、あのシチュエーションは確かにラブコメ以外の何物でもなかったわ」
「って認めるのかよ!」

否定するハルとは逆に肯定する女子生徒だったが、その表情は全力で不満そうであった。誰かが理由を尋ねる暇もなく、女子生徒自ら訳を述べ出した。

「でも!私がラブコメりたかったのはこのピンク色の男じゃなくて、翔太君なの!何でわざわざ興味もない男とぶつかってしまったのか、歯痒くて仕方ないわ!」
「ピンク色の男……」
「うわー僕まだ自己紹介してないのに名前知られてる怖いよー」

あまりに言われようにショックを受けて肩を落とすハルと同じように落ち込む後ろの席の地味な生徒。その生徒を熱い眼差しで見つめながら、女子生徒が勝手に自己紹介に入る。

「そんな訳で私は愛の魔女っ子恋中アイです!翔太君は親しくアイちゃんって呼んでいいよ!その他の男子は興味ないからどうでもいいよ!よろしくね翔太君!」
「うんよろしく恋中さん……」
「やーんもう相変わらず照れ屋なんだからっ!」

一人で勝手に盛り上がるアイをよそに、ハクト先生が朝から早くもぐったりしている地味な生徒へ視線を送る。

「では翔太君とやらも自己紹介を」
「は、はい。えっと、星野翔太です、特に特技も何も無い普通の人間ですよろしく」

アイに怯えながら翔太の自己紹介がつつがなく終わる。直後、絵の具によって沈められていた金髪が復活した。その表情はどこか痛みに歪みながらも恍惚としたものであった。

「ヒメいくらなんでも目は駄目だよ目は、急所も急所だよここ、いくら俺様がドMの神に愛された男でもこればっかりは耐えられないって」
「とか言いつつ嬉しそうな笑顔浮かべるな変態キモい」
「ではわしが変わりにあの男の紹介をしてやろう。奴は原減理男(はらへりお)、ヘリオと呼ぶといい。後変態だから無暗に目を合わせぬようにな」
「えっ俺様の名前そんなにヒメ以上の無理矢理漢字当てはめたような名前なの?ひどくない?」

辺りを見渡すヘリオだったが、誰も視線を合わせようとしない。さっそく先生の忠告を実践するとても良い生徒たちである。

「ここにきてまで放置プレイだなんてひどすぎるー!でもこんな大人数に無視されるなんてちょっと俺様……快感かも……!」
「あっ俺藤崎雄二、ごく普通の男子生徒だからよろしく」
「あーっ私も、私も何もない普通の女子です河内真紀ですよろしくです!」

すかさず目立たないように自己紹介を追える強かな雄二と置いて行かれないように必死に後に続く真紀。そして最後の生徒が机の上から一声上げた。

「にゃーん」
「ふむ、猫野コバか、これで全員の自己紹介は終わったのう」

満足そうにうなずいたハクト先生は、意外と少ないパレット組の生徒全員の顔を見回して、教室の入り口を見つめた。

「ではさっそくじゃが、転校生を紹介する」
「はあ?!転校生?始業式の日に別枠で転校生紹介とかおかしくないか?」
「つべこべ言うでない。ほれ、入ってくるが良い」

ハクト先生に促されて扉がゆっくりと開かれる。全員の視線が集まる中、つかつかとしっかりとした足取りで入ってきたのは、長い黒髪と不思議なほど強い光を放つ赤い瞳を持つ美少女だった。無表情のままハクト先生の隣に立つと、ぺこりとお辞儀をする。

「彼女の名前はカエデじゃ、みんな仲良くするように」
「「はーい」」
「ではカエデの席じゃが、どこが良いかのう」

ぶっちゃけ人数が少ないせいで席はどこもかしこも開きっぱなしである。しかしハクト先生が何か言う前に、カエデは勝手に歩きだしてしまった。そのまま視線を逸らす事無く真っ直ぐ向かって言ったのは、ハルの目の前であった。

「……は?」
「私は、あなたの隣の席が良い」
「い、いやいや、何でいきなり初対面の俺の隣の席を志願するんだよ」
「何となく」
「何となくって!」

カエデは不思議な力を持っていそうな赤い瞳でじっとハルの事を見つめながら、何気なく腰に差していた刀を握る。

「何となく、あなたを守る事が私の使命のような気がする。今ここで私は、あなたを守り抜く事をこの刀に誓う」
「いきなり勝手に誓われても困るだろ!何なんだよお前!」
「ほほう、カエデは心に決めた主を一人選びその主を生涯守り抜く一族の出なのじゃが、どうやら運命の相手が決まったようじゃな」
「なんだそのとってつけたような設定!おっ俺は認めねーぞ!」

慌てるハルだったが、驚いていたのはハルだけでなくクラス全員である。突然の胸ときめき展開に、まず一番にヘリオが文句を言い始めた。

「それはずるすぎるよヒメ!女の子とのフラグを今日だけで二本も立てやがるなんて羨ましすぎるでしょ!これが、これが主人公の力とでも言うのかー!」
「ちょっと、私とピンクの間にはフラグなんて立ってないわよ!私の運命の糸は永遠に翔太君に繋がっているはずなんだからね!」
「雄二、はさみ持ってない?」
「運命の糸だなんて大層な名前を持ってる不思議糸を断ち切れるようなはさみは俺も持ってないな」
「にゃーん」

一気に騒がしくなる教室。そこに乱入者が外から現れた。

「やあ君たち、随分とにぎやかだね。さすが思春期真っ盛りの少年少女、うーん青春だねえ羨ましい限りだよ」
「「誰だ?!」」

全員で声のした方へ振り返ると、校庭側の窓をガラリと開けた全身真っ黒な見るからに怪しい人物がにこやかに手を振っている所であった。おまけにその肩には巨大な鎌が担がれていて、紛う事無き凶器である。

「怪しい人だ!怪しい人がいる先生!」
「うむ、誰か110番で警察を呼んできてはくれぬか」
「待って待って、ぼくは怪しい者じゃないよ、死神だよ」
「余計怪しいわ!」

よっこいしょと教室内に入ってきた死神は、どこか偉そうに胸を張ってみせた。

「何を隠そう、この私立夏色学園の校長はこのぼくさ」
「えーっ?!いないと思ってたらちゃっかり校長になってたの死神?!」
「その通り。この学園で一番偉い人なのさ。ちなみに給料はプリンだよ」
「「安っ!」」

死神は教室を大股で横切ると、そのままご機嫌な様子で扉から廊下へと出て行ってしまう。

「それじゃあ校長権限で学園の食堂のメニューすべてをプリンにしてきてもらうから、またね」

結局言いたいだけ言って姿を消した死神。一体何しにここへ来たのか。思わず呆けてしまった一同は、首を傾げるカエデの一言で一気に我に帰る事となる。

「……メニュー全部をプリンにしてしまうぐらい、そのプリンという食べ物は美味しいの?」
「「はっ?!」」

一瞬顔を見合わせた面々は、決意のまなざしで頷き合う。そして息の合った動きで、一斉に教室を飛び出した。一人訳が分からない様子のカエデはハルが引っ張ってやる。

「食堂のメニュー全部をプリンに変えられるなんて暴挙、許されない!」
「嫌いじゃないけど全部が全部はやりすぎだ!」
「甘ったるすぎるのよ!」
「そもそも死神が校長だなんて俺は絶対認めねえ!」
「皆の者、手遅れにならぬうちにさっきの男を取り押さえるぞ」
「「おおーっ!」」

栄えある始業式、パレット組はじめての日。一致団結して校長の横暴を阻止するために動き出した仲間たちのこれからの一年はきっと、今日のように仲良く元気なものになるであろう。きっと。多分。おそらく。

12/04/01






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