「ツグミはわしの友人の赤竜人じゃった。当時幼かったツバキの世話を任されていたようでな、よくツバキを背負ってわしらの元へ遊びに来ておった。その繋がりで、今こうしてツバキとも親しくしておるのじゃよ」

ツグミ、という人の話をする時、ハクトの声には少々愁いが帯びる。ハクトのそういった声をハルは初めて聞く訳だが、普段が人を小馬鹿にしたような生意気な口調か投げやりな説明口調ばかりなので、その声は絶大なインパクトを持つ。そのせいで気持ちまで神妙な心地になってしまい、ハルは少し声をひそめながら、ハクトに質問していた。

「ツグミさんってその……もう、亡くなってるんだな」
「そうじゃ、何年も前にな」
「ツバキさんがハクトさんに言ってた、ツグミさんの事を引きずっているって、どういう意味なんだ?」

その質問に、ハクトの答えは無かった。口を閉ざしたまましばらく空を眺めていたかと思うと、誤魔化すように立ち上がる。

「さて、どういう事じゃろうな。ツバキも心配性じゃからな、色々とお節介な事を言いたがるのが玉にキズじゃ。主らもあまり真に受けぬようにな」

どうやら答えてくれる気は無いらしい。あまりに突っ込んだ質問だったかなとハルが反省している間に、カエデが代わってハクトに話しかけていた。

「ハクト、『あの子』って誰?」
「む?」
「ツバキと最後、『あの子』の事について話してた。『あの子』って誰?」

ぼーっとしているようで実はちゃんと会話を聞いているカエデ。ハクトは暗闇でも分かるぐらい複雑な表情をして、少々の躊躇いの後口を開く。

「昔縁あって知り合った、この群れに引き取られた幼子の事じゃよ。今はもう大きくなって、群れを離れているようじゃがの。……さて、夜も更けた。早く休まねば明日に響くぞ。わしは先に戻っていよう」

素早い身のこなしで岩の上から降りると、ハクトは有無も言わさぬ様子でさっさと用意された部屋へと入っていってしまった。呼び止める暇もなかった。ハルとカエデはその後ろ姿をぽかんと見送る事しか出来ない。ハクトの姿が部屋の中に完全に消えた後、しばらくしてからカエデがハルに話しかけてきた。

「ハクトが逃げた」
「ああ、まあお前でも分かるよなあの逃げっぷり。でもまあ人には知られたくないものが多少なりともあるもんだ、仕方ないな」

むしろ今日手に入れる事が出来たハクトに関する情報は多すぎるほどだろう。ハルは自分の胸に手を当てて、今聞く事が出来た事実を整理しようとした。
ハクトはどうやら白竜人という種族の一人で、金色の目なのは竜人の特徴で、姿が小さいのは宝珠の力によるもので、今はもう亡きツグミさんという人と何か色々あったようで、『あの子』という存在についても話したくない何かがあるようで……。

「っあー!やっぱり色んな情報が一気に入りすぎて逆に謎が謎を呼ぶような事態になっている気がしてきたし!」

ガシガシと頭を掻き毟っても頭が冴える事は無い。気を取り直すようにため息をついたハルは、のろのろと立ち上がった。

「ここでこうしていてもしゃーない、今日は俺たちも寝るぞ、カエデ」
「分かった」

大人しく従うカエデを連れて岩を下りながら、ハルは明日の事を考える。今日はのんびりと過ごさせて貰ったが、明日は少しスリリングな日になるかもしれない。何せ竜の背中に乗せて貰うのだ。普通に生きていればまず体験出来ないであろうそれに、ハルの胸は今からドキドキしてくる。今日は眠れるだろうかと心配になってきた。いやそれよりも……ここは竜人の里、眠っている間に知らず知らず頭から食べられてしまうんじゃ……。

「ハル、顔色悪い」
「は、はは、気のせいじゃないか?月の光のせいだきっと」

カエデに顔を覗きこまれて、慌てて首を横に振る。これだけ世話になっているのに食われるだなんて失礼なことだ。そこまで自分が竜に恐れを抱いているとは知らなかったと、ハルは自分で自分に驚いていた。
そしてもう一つ。ハクトがその竜人の一人であると知れたのに、ハクトに対しては恐ろしさと言うものが自分の胸の中で一切生まれない事にも、少しだけ驚いている。見た目のせいか、内面を少しだけでも知っているからか、理由は定かではないが。ハクトがいつか元の姿に戻り、竜の姿になって見せた時にもきっと自分は恐れないのだろうと、ハルは変な確信を抱いているのだった。




次の日も気持ちの良い快晴だった。風もあまり吹かないまさに絶好の飛行日和といった所か。どこまでも続く青々しい空を睨みつけるようにハルは立っていた。機嫌が悪いのではない、緊張しているのだ。

「皆、紹介するわね。こいつはリュウ、私の弟分よ。今日はこのリュウと私であなたたちを運んであげるから、よろしく」
「よおあんたたち、よろしく!人間を乗せて飛ぶのは初めてだけど、まあ何とかなるだろ!大船に乗ったつもりでいてくれよ!」

ツバキが連れてきたのは、ハルと同じぐらいか少し上ぐらいの歳に見える青年だった。ただし身長はハルよりかなり上で、きっと竜人というのは身長が高い一族なんだろうとハルは思い込む事にした。燃えるような短髪の赤毛と人懐っこそうな金色の目で、赤竜人であることが一目で分かる。
リュウを紹介されて一番最初にリアクションを取ったのは、露骨にがっかりした様子のヘリオであった。

「なーんだ、男かー。そういう元気系の男って俺様苦手なんだよねー主にテンションが。今回は仕方が無いから我慢してやるけど」
「ツバキさんが最初から弟分って言ってただろ、何でお前が上から目線なんだよ。あんまり調子乗ると空の上から突き落とすぞ」
「うわあヒメが緊張のあまりイライラして本当に突き落としそうな目してる!カエデ様気をつけて、ヒメに空の上から落とされちゃうから」
「あー、突き落とすのは確実にお前だけだから安心しろ」
「え……?ヒメそれって、俺様への歪んだ愛情って奴?!」
「愛情であってたまるかっ!」

ハルがヘリオに構ってやっている間に、ハクトがツバキと話を進めていた。

「ほう、まだまだ若造じゃな。数多の竜人を見てきたがこれほどまでに安直な名前はそうそう聞いた事が無い」
「長老が適当に付けてたわね確か。生まれた時から私が直接世話してやっている子なのよ。赤ん坊だった頃がつい昨日の事のように思い出されるわねえ」
「ツバキ姉〜俺これでももうすぐ20歳になるんだぜ?そんなババ臭い事言ってると歳がバレちゃうぞー……って嘘!嘘です!生意気言ってすんませんっした!」

今さっきまでヘラヘラしていたリュウがツバキに睨まれただけで土下座し始めている。普段からどんな教育が行われているか一目瞭然だった。ツバキの年齢が気になり始めたハルだったが、目の前の光景を見ていると恐ろしくてとても聞けない。
気を取り直したツバキが、ハルたち一行をぐるりと見渡す。

「さーて、さっそくだけどどちらにどのように分かれて乗るか決めましょうか。私が決めちゃっていい?」
「うむ、任せた」
「そうねー、それじゃあ、ハクトが私、他の三人がリュウで。これでいきましょ!」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってツバキ姉、おかしい!明らかに比率おかしいから!」

さっさと決めてしまったツバキにリュウがすかさず抗議の声を上げるが、ツバキは何でもないような笑顔でリュウににっこりと微笑みかけるだけであった。

「なあに?何か文句でもあるの?」
「……いいえ、ありません……」

竜人界では上下関係が厳しいのかもしれない。ここまで強烈ではないがハルにも姉がいるので、弟分の気持ちは少しだけ分かる。しょぼくれるリュウの肩を思わず慰めに叩いてやりたくなったハルだったが、寸での所でやめておいた。とばっちりがこっちに来てはたまらないからだ。心の中でエールを送るだけでとりあえず許して欲しい。
ともかくこれで段取りは決まった。後は実際に飛び立つのみだ。大きな岩の上にそれぞれ飛び乗ったツバキとリュウを、ハルはさらに緊張した面持ちで眺める。竜人たちの人の姿も竜の姿もこの里でいくらでも見る事が出来たが、その中間は未だに見た事が無かった。即ち人が竜になる瞬間、あるいはその逆の様子である。それをとうとう、今見る事が出来るのだ。
ツバキはハルたちに一度にっこりと笑いかけてから、空を仰いだ。大きく胸を逸らし口を空に向けて開けて、ツバキは吼えた。吼えたとしか表現出来ないような音がその口から迸ったのだ。さっきまで聞いていたツバキの凛とした声とは程遠い、凶暴な獣のような鳴き声である。ハルがはっきりと認識できたのは、そこまでだった。

「……えっ?!」

それはまさに瞬きをしている一瞬のうちに、終わっていた。ハルはツバキが膨らんだと思った。細身の人型の身体がまるで風船のように膨れ上がり、次の瞬間には全身が固く真紅に染め上げられていた。いつの間にか生えていた羽も尻尾も同じように赤く、伸びた頭部に光る瞳だけが輝く金色をしている。人から竜になる間を実感している暇もない。変身途中にタイムスリップをしたか、そもそも間の時間なんて存在していなかったと錯覚してしまうほど、それは一瞬のうちに過ぎ去っていた。赤く長い髪を持つ美しい女性ツバキがいた場所には今、ほぼ二倍の大きさとなった赤竜が大きな翼をゆっくりと動かしながら存在していた。

『ふうっ。さあ、準備は出来たわよ、いつでも飛べるわ』

鋭い牙が並ぶ竜の口から出てきたのは、少々くぐもってはいるがツバキの声であった。その声でようやく目の前の竜がツバキである事が実感できる。
ハルがツバキを見て放心している間に、リュウの変身も終わっていた。ツバキと同じように空へ吼えて、そして気がついたら立派な竜の姿になっている所もそのまま同じである。違うのはその姿。リュウの方が身長が高いからか男だからなのかツバキよりも一回りほど大きく、背中に生えた左の翼だけが漆黒に染まっていた。ハルとヘリオがポカンとしている中一人平然とした顔でそれを眺めていたハクトが代表して話しかける。

「リュウと言ったか、片翼だけ色が違うとは珍しいのう」
『へへっかっこいいだろ!俺の方も準備万端だぜ、ほら、早く乗れよ!』
「そうじゃな。ハム、そんなに呆けていては振り落とされても知らぬぞ。正気を保つのじゃ」
「はっ?!あ、ああ……わっ分かってる」

いよいよだ。ハルの緊張はピークに達していた。跳ねまくる心臓を少し落ち着かせようと、一晩世話になった赤竜人の里を振り返る。住人達はハルを興味深げに遠巻きに眺めて近づこうとはしなかったが、その中から一人、小さな人影が駆け寄ってきた。人一倍キラキラと輝く金色の瞳でハル達へと飛びついてくる。シュウだった。

「ハム!元気でね、途中で落ちないようにね!」
「おおシュウ、世話になったな、ありがとう。ついに俺の名前を普通に呼んでくれる事は無かったなこんちくしょう」
「ねえねえハム、また来てくれる?今度はもっといっぱいお話してよ、私里を出た事無いから、外の世界の事知りたいの!」
「聞いてねえし!あーはいはい分かったよ、今度来た時は今まで行った事ある場所の事、めいっぱい聞かせてやるから」
「ほんと?!約束だよ、ツバキ姉ちゃんのお友達と、カエデもまた一緒に来てね!待ってるから!」
「うん、分かった」

最後にカエデに元気いっぱい手を振って、シュウは戻っていった。触れられる事が無かったヘリオが少し寂しそうだったが、子どもが苦手だと言って交流してこなかった自業自得であるので放っておく。
シュウに和まされ、覚悟を決めたハルはツバキとリュウに向き直った。ハクトはすでにちゃっかりツバキの背中に収まっている。

「ハクトさん早っ!」
「主らが遅いのじゃよ。ほれ、早くせんか」
「私から行く」

ハルが何か言う前に、カエデがすたすたとリュウに近づいた。そのままひょいとリュウの背中に身軽に飛び乗ると、乗り心地を確認してからハルに向かって腕を差し出す。

「ハル、大丈夫みたいだ。引っ張るから掴まって」
「あ……ああ」

少し恥ずかしかったが、もたもたしていたら嬉々としてヘリオに先に越されてしまうので、思い切って伸ばされたカエデの手に捕まる。すると、ハルの重さなんて何ともないような力で軽々と持ち上げられ、何の苦労もなくリュウの背に乗る事が出来た。ごつごつと固い表面を掴みながら、やっぱり男としてちょっぴり複雑な思いを抱く。

「カエデ様ー!俺様も!俺様も引っ張って―!」

ハルがカエデに引っ張ってもらうのを見て、すかさずヘリオが駆け寄ってくる。その期待に満ちた顔にカエデが手を伸ばしてやる、前にハルがヘリオに伸ばしてやった。

「ほらよ」
「……ありがとう」

不満大爆発の表情で、しかしハルの手を借りてヘリオもリュウの背中に上る。これで前からヘリオ、ハル、カエデの順で無事三人乗る事が出来た。

『おーし乗ったな?あんたら落とされないようにちゃんと前の奴にしがみ付いとけよ』
「えーちょっと、俺様いちばん後ろがいい!後ろになってカエデ様にしがみ付きたい!もしくは真ん中になってカエデ様に抱きつかれたい!もっかい乗り直そう!」
「アホ、そんな暇あるか、っつーかさせるかっ!」
「ハル、後ろは任せて。ハルが落ちないようにしっかり捕まえておくから」
「ちょっちょっと待てカエデ、そんなにひっつかなくていいから……!」

文句を垂れるヘリオの背中を叩いたりぎゅうぎゅう抱きしめてくるカエデにあたふたりしたりとハルは飛び立つ前から大忙しである。そんなハルの様子なんて物ともせず、竜たちはばさりと音を立てて大きく翼を広げた。まず最初に宙へ舞い上がったのは、ハクト一人を乗せたツバキだった。

『リュウ、私が先に行くから、あなたはしっかりついてきなさいよ!』
『了解!あんたたち、行くぜ!』
「えっもう?!ちょ、ちょっと待ってくれまだ色々心の準備が……うわあっ?!」

慌てふためくハルの身体が瞬時に下へと押しつぶされる。とっさにぎゅっと目をつむれば、しがみ付いた赤い身体が不安定に揺れる震動と、振り落とそうとしているかのように吹いてくる強い風をつぶさに感じる事が出来た。ひええっと前から聞こえてくる情けない悲鳴はヘリオのものだろう。口を開ければ自分もあんな声が漏れてしまうだろうと、ハルは自らの唇を固く噛み締めた。そうしていないと声どころか、舌まで噛んでしまうような気がした。がくがくと揺さぶられるのに必死にしがみ付いて抵抗する。
やがて、上から吹いてくる風が弱まり前から容赦なく吹いてくる風ばかりを感じとれるようになった頃、後ろからカエデが声をかけてきた。

「ハル、すごいな、空を飛ぶってすごいんだな。里がもうあれだけ小さく見える」
「……え、ええっ?」

カエデの言葉に、ハルは恐る恐る、ゆっくりと目を開けてみた。まず見えたのは赤い竜の皮膚。じっと俯いていたのだから当たり前だ。そのまま顔を上げれないまま、ハルはそろそろと視線を移動させて、眼下を見下ろした。

「……う、うわあ……と、飛んでる!」

リュウはツバキと共にゆっくりと空の上で輪を描いて、里の上を旋回しているようだった。なのでハルの足元には赤竜人の里の全体像がくっきりはっきりと見える。岩にくり抜かれた無数の家々と、もう豆粒ほどにしか見えない赤い頭たちと、ちらほら見えるこちらと同じように優雅に飛ぶ赤竜たち。その全てが見えた。あの一瞬でもうこれだけ高い所まで到達したのだ。ハルの胸に、驚きと感動が一気に押し寄せる。ああ、今ここでスケッチブックを広げられない事が悔しくてたまらない!

「すげえ!飛んでる、俺達飛んでるぞ!カエデ、見えるか?!」
「うん、すごくよく見える。ここまで高く飛んだのは私も初めて」
「俺なんて飛ぶ事自体が生まれて初めてだっての!なあヘリオ、お前も見てるか?見ないともったいないぞこの景色!」
「え、ええっ?!ヒメってばもう慣れちゃったの?!意外と神経図太いんだね……繊細で儚い俺様の脆いハートは今にも止まりそうなぐらい怖がってるのに……!」

ヘリオは全身でリュウにしがみ付いたまま、固く瞳を閉ざしているようだ。情けない奴だと思いながらもこんな状況で怖がるなと言うのも酷なので、ハルは何も言わないでおいた。
しばらく旋回を続けていた二匹だったが、やがてツバキが輪を離れて太陽に向かって飛び始めた。とうとう渓谷を抜けるための空の旅が始まるのだ。リュウも後を追うように身体を傾ける。

『今から渓谷の向こう側に向かうぜ!あんたたち、くれぐれも落ちないようにな!』「おお、頼んだ!んで、ここから向こう側まではどれぐらいかかるんだ?」
『なあに、俺達赤竜人のスピードならすぐに辿り着くから心配すんなって!まあ白竜人とか本物の竜にはさすがに敵わないけどなー、っと!』

進行方向に向きを定めたリュウの飛ぶスピードがグンと上がる。それだけでハルにとっては今までのどんな乗り物や生き物よりも速く飛んでいるような気がしてならないが、これより上がいるらしい。竜人の種族間でも色々と違いがあるようだ。
ハルはもう一度だけ、もうほとんど人物の姿は見えなくなってしまった里を振り返る。

「うわ、里がもうあんな遠くにあるぞ」
「里の上を飛んでいた時、地面からシュウが手を振っていたのが見えた」
「見えたのか?お前は相変わらず目が良いのな。手を振り返したか?」
「振り返す?」
「手を振られたら、手を振り返すもんなんだよ。まあこの高さで見えるかどうか分からないけど、気分的にな」
「そうなのか……分かった、次はそうする」

生真面目に頷くカエデにこっそり笑いながら、ハルは正面へと向き直った。登ったばかりの太陽が目に染みる。普段は手の届かない高い所を飛んでいる恐怖はまだ少し残ってはいたが、それよりも好奇心の方がはるかに勝っていた。
ハルは今のこの感覚をよく覚えておこうと思った。景色なら、後で思い出していくらでも地上で描ける。しかしこの空を飛んでいるという感覚は、どんなに頑張っても絵に表す事が出来ないものだ。どんなに臨場感を持たせる絵を描いてみせても、実際にこうして体験した時の感動は到底映し出せるものではない。それが絵描きのハルにとっては、悔しくもあった。

通り過ぎていく山々、先に見えてきた大きな口を開ける渓谷、左右に見える大きな赤と黒の翼、優雅に美しく空を飛ぶもう一匹の赤竜、そして背中から回された腕から伝わる温度。
その全てを、きっと一生忘れる事は無いだろうと、ハルは思った。

12/06/18



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